年賀状甲子園2012年・審査員の選評

審査座談会

まずは皆さんの採点の結果、優勝が宮城県仙台第一高等学校という結果となりました。評価が高かった京都精華女子高等学校は組み合わせでベスト4で敗退する不運もありましたが、トーナメント表を見ながら、皆さんの総評をお伺いしたいと思います。

しみずひろみ

優勝校はなるほど納得、という感じです。3つのテーマがそれぞれきちんと作品らしくまとまってて、だから3つのバランスで得点に反映された。それぞれの作者の思いが感じられ、上手く表現してありますね。ルーキー応援に関して、応援とターゲットの選手が決まっているということで表現しやすいでしょうね。イラストに力が入ってる作品が多いなぁ〜と感じました。勢いもあるし。見ていて楽しい。全体的にはやはり楽しんで取り組んでいるな、と感じられるものには勢いというか空気感、伝わってくる何かがあって、魅力あるものに仕上がっていると思いました。

いのもとまさひろ

しみずさんと同じく、優勝校の宮城県仙台第一高等学校については、みなさんの採点結果も良く、納得の結果という感じですね。僕も、優勝校を知った時、「やっぱり!」と思いました。表現したい内容が、上手く作品として表現されているという感じでしょうか。

渡部政人

私が思っていた結果とはやや違いましたが、優勝校の宮城県仙台第一高等学校に1点、ベスト4に2点印象に残った作品がありました。各校それぞれの思いが感じられて楽しく拝見しました。各校共、根底に共通した方向性、一体感、込めた思いが感じられます。それが各校の個性となって表現され、そのパワーの強い所が最後まで残ったと思います。

竹本明子

結果発表のトーナメント表に自分が採点した点数を書き込んでマイトーナメントをしてみた所、組み合わせにもよると思いますが、1ブロックを除いて、結果発表と同じでした。「絵の上手な作品」や「構図や表現の面白いもの」は多数ありましたが自分の審査基準として大切にしたポイントは「年賀状」という性質でした。(「年賀状」としてみた場合、賀詞や年号、干支、新しい年を迎えるにあたってのメッセージがどのように扱われているか。)高校生らしい楽しいものから古典的なものまでバラエティに豊んだ力作ばかりで、とても楽しませて頂きました。

(審査員の竹本明子氏がブログにも年賀状甲子園の審査の経過を書かれています)

永井けい

優勝した宮城県仙台第一高等学校。イラスト、写真、ルーキー3部門ともプロ並みの技術水準だと思いました。高校生でも、ここまで画力があるのかと、驚きました。

ベスト16校の中で印象に残った高校、作品などについては如何でしょうか?

渡部政人

優勝校を除き長野県立坂城高等学校の写真作品、福島県立光南高等学校の写真作品、京都精華女子高等学校のルーキー応援と写真がとても良いと感じました。私の個人的な感想ですが、この4点は構図がしっかりしていて全体のバランスがとても良く、安定感、安心感があります。この事がテーマをより印象深くしていると思います。

しみずひろみ

印象に残ったといったら中村高等学校かな。特にルーキー応援は「いったいこれは何?妖怪?」「沖縄のシーサーみたい」なんて思いながら何度も見入ってしまいました。作品の善し悪しより、インパクトは強くありますね。不気味で怖い。でも高校生なんだからインパクトねらい!受けねらい!くらいの動機があっても私は楽しいと思います。そう思って他の2点をよーく見ると残りの2点もインパクトねらいの要素が充分にあるような気がしてきました。陽気さOK!ですね。

竹本明子

イラスト年賀状では宮城県仙台第一高等学校の作品が素敵です。2011年は悲しいことの多かった年ですから、ほっこり優しい気持ちになれる年賀状は貰った方も嬉しいのではないでしょうか。静岡県立清水西高等学校の作品も、楽しい高校生活が目に浮かびます。

写真年賀状は、京都精華女子高等学校の作品が印象的でした。アイデアも良いですし、龍のイラストも良いです。賀正の文字はもう少し濃い色でも良かったかもしれませんが、個人的に好きな作品の1つです。宮城県仙台第一高等学校の作品も、コンセプトが伝わってくる素敵な作品で、手描きで書かれたメッセージが心にしみます。静岡県立清水西高等学校の作品も、楽しそうな部活の様子が伝わって来ますね。

永井けい

準優勝の京都精華女子高等学校が印象に残りました。イラスト、写真、ルーキー3部門ともかなりセンスと技術が高いと感じました。

それではイラスト部門と、写真部門のMVPを決めたいと思いますが、如何でしょうか?

渡部政人

MVPイラスト部門は安田女子高等学校。ゴールドと墨の組み合わせがドラマチックで迫力もあります。MVP写真部門は久留米市立久留米商業高等学校。私の中ではBestです。

しみずひろみ

心を動かされた、という観点だと写真部門は優勝校の仙台第一高等学校か久留米商業高等学校かのどちらかとおもったのですが、(仙台第一高等学校は候補に入っていないので)私も久留米に一票です。

永井けい

私も、しみずさん、渡部さんと同意見で、写真部門のMVPを選ぶとしたら、久留米市立久留米商業高等学校ですね。龍の雲の表現がうまいですよ。尻尾のあたりは自然に空にかすんでるところといい、朝日に照らされて部分的に明るくなっているところもすごいです。で、上手いんだけど「HAPPY NEW YEAR」の文字は、サラッとしたフォントで流してますよね。そこがまたニクいんですよ。「どうだッすごいだろ!」って感じじゃないでしょ?このバランス感覚もすごいと思いました。イラスト部門は迷ってしまうなあ。ベスト8に選ばれてる時点で、力量はみなさんあるんですよねー。絵柄が安定した上手さだけで評価せず、ココは、もう自分の好み、主観になってしまうんですけど兵庫県立長田高等学校に一票。高校生らしい元気さがあって、かわいいからです。

いのもとまさひろ

写真作品では、やはりしみずさんと同じく、(候補には入っていませんが)宮城県仙台第一高等学校の写真作品です。他には、京都精華女子高等学校と久留米市立久留米商業高等学校の写真作品が共に、アイデア・完成度ともにとても良いと思います。このあたりは、やはり他の方も上げてらっしゃいますね。

イラスト作品では、渡部さんと同じになりますが、安田女子高等学校の作品が目を引きました。

MVPとは関係ありませんが、イラスト作品を拝見していて感じたのは、近年言われるいわゆる「コミックアート」系の作風が多いなと感じました。もちろんいけないわけではありませんが、趣味に走りがちな傾向を感じました。きちんと趣旨のある作品として仕上げて欲しいなと、少し気になりました。

この時点で久留米市立久留米商業高等学校がだんとつの票を得て写真部門のMVPが決定。

しみずひろみ

イラストの意見は分かれているようですが、私は土佐女子校高等学校を押します。日本地図をベースに独特の味わいがある龍になっていて、またシンプルなのがいいです。個性や技量はさておきコミック調は選びにくいかな…という個人的な好みもあります。日本、頑張れ!というところでここに1票です。

写真MVPはほぼ票が統一してますので久留米市立久留米商業高等学校という事で問題はないかと思います。後はイラストMVPが票が割れていますので、竹本さんいかがでしょうか?

竹本明子

MVPノミネート作品の中から、好印象の作品を選ぶとするとイラストは、土佐女子高等学校です。龍が日本列島になっているのがとても良いと思いました。水神や海神として祀られる龍神が踏ん張る日本を、見守っているような作品ですね。写真は、個人的に好きなのは、京都精華女子高等学校ですが、作品として美しいのは、久留米市立久留米商業高等学校でしょうか。雲で描かれた龍が素敵です。

完全に票が割れてしまいましたが、如何でしょうか?

渡部政人

ベスト16校からTOTALで選ぶとするならば、私は宮城県仙台第一のイラストを推薦しますけどね。どの作品も横一線でしたのでイラストMVP候補を土佐女子高等学校に変更いたします。

永井けい

私も土佐女子がMVPに異論ありません。

いのもとまさひろ

土佐女子高等学校で異論はありません。安田女子高等学校としていましたが、僅差という感じです。

それでは、イラストは土佐女子高等学校ということで決定させて頂きます。ルーキー応援は駿太選手自身が選出していますが、印象に残った作品はありますでしょうか?

渡部政人

私が印象に残ったのは京都精華女子高等学校と盈進学園東野高等学校です。

いのもとまさひろ

京都精華女子高等学校の作品が、渡部さんと同じく総合的に素晴らしいと思います。他に、応援年賀状という意味で「こういうのもらうと嬉しいだろうなぁ」と思った作風なのは、愛媛県立松山商業高等学校の作品です。とにかくストレートですね。純粋さが出てて気持ちいいくらいです。書き込まれたメッセージが多くて、文面からして実際にもらうと嬉しいだろうなぁと思いました。年賀状って、こういう部分が嬉しい要素を占めているとも思いました。

竹本明子

(賞をとった)北海道札幌平岸高等学校と、愛媛県立松山商業高等学校が印象的でした。北海道札幌平岸高等学校は、「竜宮の使い」は春の案内人とも言われるので年賀状のモチーフにピッタリですね。「たつあがれ」のコメントも好きです。愛媛県立松山商業高等学校の作品は、似顔絵に勢いがあって良いですね。いのもとさんのご意見と同じですが「もらうと嬉しいだろうなぁ〜」と。

しみずひろみ

印象に残ったという言い方ではなく、似顔絵を含むイラストの描き方が好きだなぁ、と思ったのが北海道札幌平岸高等学校作品です。嫌みがなくてさらっと描きあげて、ユーモアもある。他に、印象に残ったといえば山梨県見延高等学校の作品です。コラージュっぽくて平面的なイラストで仕上げてあるのだけれど妙に不釣り合い感のある構図で、それが絵の力強さになってる。自分の思いをそのまま紙面にぶつけた飾らない感覚が好きです。

永井けい

優勝した宮城県仙台第一高等学校の作品です。龍の姿の背景とボールを中心とした構図の取り方、着色センス、デッサン力などすばらしい!

その他トータルで特に印象に残った作品などがあれば挙げて頂ければと思います。

渡部政人

優勝・宮城県仙台第一高等学校のイラスト、北海道札幌平岸高等学校のイラスト、兵庫県立長田高等学校の写真です。

しみずひろみ

先にコメントした中村高等学校です。3作品をセットで考えてどれも皆、作者は技術力を持ってて、その上であまのじゃくにはみ出している。優等生ではないところが高校生ぽくてそこにエネルギーを感じます。もしかしてアウトサイダーな意見かもしれませんね。

竹本明子

イラストは、やはり宮城県仙台第一高等学校の作品でしょうか。雪景色なのに暖かく感じる作品で、とても素敵です。写真は、個人的には京都精華女子高等学校の作品が好きですが徳島県立阿波西高等学校の作品(ご飯粒の虹、チーズと海苔で出来たタツノオトシゴ)は撮影時のライティングを工夫するとうんと良くなるのでは?と思うので次回作に期待したいですね。

永井けい

個人的には、徳島阿波西高校のシブめの龍がかなり気に入ってたのですが、候補にはいっていなかったので、残念ですね〜。

いのもとまさひろ

永井さんのおっしゃる、徳島阿波西高校が候補に入らなかったのが残念というのもわかります。ただ、丹念に描き込まれている分、顔の不自然さが目立ってしまうんですよね。そこだけ、テンションの違いにアンバランスさを感じるというか。しかし、よく描かれているイラストだと思います。それと、なにより色ですね。彩度がまとまっていて良くできていると思います。

最後にひとことお願いします

永井けい

若い力がみなぎる作品を拝見して、さわやかな気持ちになれました。テーマはひとつでも、それぞれ個性的な表現で描かれていて、とても楽しい企画ですよね!若いみなさんのがんばりを見て、私自身が奮い立ちました。ありがとうございました。みなさんの力作は、審査前の想像以上にレベルが高く、最終審査では甲乙つけがたい場面もありましたね。刺激的な時間を持てて楽しかったです!

いのもとまさひろ

参加された方、僕も楽しませていただきました。ありがとうございました。お疲れさまでした!こういう企画がきっかけで、友達とワイワイやりながら、同じベクトルを向いて取り組むという事は、とてもいい経験になると思いますし、いい思い出にもなると思います。それが、敗退した学校の作品からも十分感じました。僕は、それが1番大切な事なんじゃないかなと思っています。まず楽しむことですよね。趣味でも仕事でも、描くという行為の根底に「楽しむ」ことがまず必要だと常々思います。それが、たくさん一度に見る事ができてとても楽しかったです。負けてられません!

採点を見ていると、勝ち残った学校は、ほぼ皆さんも評価が良いという結果で、いい作品は残るべくして残るんだなぁと思いました。(僕は甘めの採点をしていましたが、それでも結果は同じだなと。)こういう所に参加した高校生の中にも、デザイン系の専門学校に進んだりする子がいると思います。それが、なぜか徐々に楽しむ事ができなくなって、描けなくなる子もいます。趣味から脱して、スキルアップしていく段階の過程でも、今回のような経験を忘れず、胸のどこかにでもとどめておいて欲しいなと思いました。

竹本明子

考え、楽しんで制作されたことが伝わってくる作品ばかりで、審査はとても楽しかったです。いのもとさんがいわれていることと重複しますが、「年賀状というテーマ」から「独りよがりで終わらず、見せる(誰かに送る)事を意識しているかどうか」は、大きなポイントですね。

私も小学校の先生と、20年以上に渡って年賀状を交わしています。普段は会うこともないし、電話をするでも、メールをするでもありませんが一年に一度、年賀状を交わすことで、懐かしい小学校時代を思い出すのです。年賀状は日本の素敵な習慣なので、年賀状で繋がっている関係を大切にしたいなと、時を重ねるにつれて思います。

高校生の皆さんがそれぞれ工夫を凝らした年賀状を作成してくれたのですが、制作時はきっと「受け取る誰か」のことを思い浮かべたのでは?と思うのです。高校生の皆さんも是非これを機会に、学生時代の友人や先生方と、大人になっても、一年に一度、年賀状を送り合って「お互いの今」を報告し合ってみてはいかがでしょう。素敵な企画で審査員をさせていただき、ありがとうございました。関係者の皆様に感謝します。

しみずひろみ

個人的には写真とルーキー応援が特に審査してて楽しかったです。イラスト部門に関しては、何だろう?思いがしぼりきれていない作品があるように感じました。他の皆さんと違って採点が辛口だったかもしれない。

渡部政人

私も小学校低学年から絵(マンガ含)を描いていますが高校生の時を比較して見ると、デッサン力、バランス感覚、カラースキームなどどれをとっても私が描いていた頃と、画力が格段に違う事に驚きました。各作品の内容の豊富さ、今の高校生の発想の面白さ、トレンド(傾向)など、大変勉強になり、また楽しく拝見させていただきました。ありがとうございました。

座談会は、2011年12月15日、インターネットを利用して実施。審査に関する事から年賀状全般の話題、マンガに関する話題まで幅広く出て、最終的な結果が出たのは夜遅くでした。直接審査に関係のない話は割愛させて頂きました。また、審査委員の敬称は略しています。
審査員の竹本明子氏がブログに年賀状甲子園の審査の経過を書かれています。必見です。